今更ながら流し撮りについて...
レースの写真を撮影している人に今更ながら流し撮りについて説明するのは、「釈迦に説法」のように感じるのだが...整理の意味で改めて記載してみたい。
■ シャッター速度の選択は...
「横走りを撮るのは1/250で、正面は1/500、スローシャッターは1/30か1/15」
これが、流し撮りのシャッター速度の基本であった。否、今でも基本としては正しい。だが、カメラの進歩で、*中間のシャッター速度が使えるようになると、シャッター速度の選択に幅が出てきた。また、デジタルで解像度が上がった事から、更に速いシャッター速度をセレクトするケースも出てきた。
*中間のシャッター速度 ...昔のメカニカルシャッターでは、シャッター速度は、『...1/500、1/250、1/125、1/60、1/30、1/15...』と、絞りで言うとひと絞り分毎しか選べなかった。今のカメラは、その間のシャッター速度が1/3絞り(または半絞り)分単位で選べる。そのシャッター速度の事を中間シャッターと呼ぶ。
最近のバイクの撮影では横走りの場合、1/320や1/400も使われる。
鈴鹿のS字などは、比較的速度が速い事から上記のようなシャッター速度でも「マシンはかっちりと写りながらも、タイヤは回っているし、バックも比較的流れている」ので、予選など「単走り」を抑える場合などに選択される。
正面も、デジカメの解像度がフィルム以上になったことから、1/500では止まっていないことが明確にわかる場合も出てくる。そのため1/800や1/1000なども使う。
一言断っておくなら、シャッター速度の選択は被写体の速度だけでなく距離も関係してくる。距離が近ければ、同じ被写体でもシャッター速度を速くしないとブレが目立つ。動く角度(幅)の違いで見かけのスピードが速くなるためである。観客席の距離で、このシャッター速度を選ぶと、ケースによっては止まっているように写るので注意が必要。
一方でスピード感を出すために、1/200や1/160を意識的に使う。また、1/100から1/80、1/50や1/40等の中間シャッターも積極的に私は使う。ぜひ色々なシャッター速度で撮影して「どこで」「どのように」写るのかデータを残して欲しい。それが作品作りに役立つはずである。
■ 流し撮りの定義って...
一般的に「バックが流れ、タイヤが回って、マシンが止まっている」撮影結果を『流し撮り』と言うようだ。そのため、止めて撮る...という言葉も聞かれる。
でも、これってどうなんだろう...流し撮りとは撮影結果なのだろうか?流し撮りとは撮影手法ではないか?つまり「被写体を追従して、常にファインダーにおさめて、ポイントに来たらシャッターを押す」という手法が流し撮りではないのか?
「少しでもカメラを動かすなら流し撮りなのだ...」と私は鈴木先生から教わったので違和感がある。
なにかの議論をする時には定義をきちんとしなくては困るだろうが、そういうことではないし、自分はそう教わったということで、あえて正面切って反論するつもりはない。
ただ、ここでの流し撮りは、手法について言及していると認識して欲しい。
■ コツはあるのか?
巨大なレンズを一脚もしくは手持ちでスムーズに流していく...
難しいですよね。なにかコツはあるのか?あったら知りたいですよね。でもないです、残念ながら。
繰り返し撮影する、たくさん撮る、自分にあったフォームを探し出す。技術の向上だから、スポーツと同じ。
繰り返し、たくさん撮影する。反復は、最大の技術上達方法。
それと自分にあったフォームを探るのも大切。体格が異なるので、正解は一つではない。左手の位置、一脚の高さ、レンズの一脚の取り付け穴の位置、カメラへの顔を押し付け...等々。
また初心の頃はイメージトレーニングも良いと思う。部屋の中で、サーキットを想像し実際に流してシャッターを押してみる。そして一つ一つチェックする。意外と効果がある。
もう一つ、カメラそのものにもできる範囲でチューニングを施す。
EOS1D系のカメラなら、シャッターストロークを短くして、反応速度をあげ、ブレを防ぐ等工夫することも忘れずに。
ただ、こういう事ができないカメラはダメというわけではない。人間というものは、凄いモノで克服する事ができる。かって、私はシャッターストロークについては非常にこだわっていた。もちろん今でもこだわっている。しかし、反面、EOS KISS DXも使っている。1D系に比べシャッターはチューニングできないが、走りもシビアな限界を求めなければ撮影できている(2007年のFN、SGT、8耐はこれで撮影)。しかも、ピットでは、(良いカメラ個体を手に入れたのか)ピンの精度が抜群で手放せなくなっている。要は慣れる事、自分の身体の一部にすること、機材を信じる事が大切と言える。
■ 撮影技術は向上するが...
一点だけ、言及しておきます。
上記は撮影技術の向上の話をしたもの。しかし、写真とは技術だけではなく、感じる心(視点)も大切。どちらかが欠けても成立しない両輪と言える。視点とは、撮影だけでけでなく日頃の生活の中で感じる様々なことへの気づきなのだ、と言う事を忘れずに...
写真バカになる時期は必要だが、写真バカで居続けてはそのうち壁にぶつかるのである。
(了)

前のページへ